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  1. 医療関係法律情報(Q&A)
 

その他の情報

「弁護士に〜を依頼すれば、具体的に何をしてくれるの?」という素朴な疑問にお答えするため、このコンテンツでは、弁護士に 依頼をされた場合に、具体的に弁護士がどのような事件処理等をするのかを、典型的な事件別に分かり易く説明していきます。

ブログ形式で随時更新してまいりますので、弁護士に相談してみようかと考えらおられる方は是非参考にして下さい。

2008/09/30

Q 医療費を支払わない場合、診療を拒否しても良いでしょうか。

A

現在、医療機関の診療費未払の問題は深刻化しており、大きな病院ですと、年間数千万円の規模になっているところもあります。

そのため、医療費の回収問題にどこの医療機関も頭を悩ませているところです。

そこで、医療費の支払いを促すという観点から、治療費を支払わなければ今後の治療をお断りすることはできるのでしょうか。

患者と医療機関は民事上、診療契約を締結し、患者は治療費支払義務、医療機関は診療義務を負います。契約内容によっては、診療義務と治療費支払を同時履行ということも考えられるかも知れません。

しかし、医師には医師法19条1項により、応招義務があります。これは、医師は正当な理由がなければ、診療を拒んではならないというものです。ここにいう正当理由に治療費未払は該当しないとするのが通説的見解であり、未払治療費がある患者の診療を拒むと、医師法違反となってしまう可能性が高いといえます。

したがって、ご質問のとおり診療拒否をなさると医師法違反に問われますので、診療拒否をしてはならないと言うことになるでしょう。

では医療機関の対応としてどうすれば良いのでしょうか。

生活に困窮している患者については、生活保護などの公的扶助を受けるように助言することが考えられます。

しかし、最近目立つのは支払能力があるのに支払わない、治療内容について不満があるから支払わないという患者さんです。この方たちに対しては、まず請求書をきちんとだす、それでも支払わない場合は、内容証明郵便を用いて請求したり、さらには弁護士に依頼をして内容証明郵便にて請求をすることがよいでしょう。それでも支払われない場合、民事訴訟をすることを考えるべきでしょう。顧問弁護士がいる医療機関では顧問弁護士に依頼する他、請求額140万円までの裁判であれば、顧問弁護士の指導の下、総務課や医事課の担当者を特別代理人に選任して民事訴訟を提起することも選択肢として十分考慮に値するものです。

判決を取得した後は、患者さんの財産に強制執行をすることになりますが、この点については顧問弁護士によく相談してほしいところです。

医療機関という性格から、なかなか未払治療費について請求をためらうところがあるようですが、医療機関の経営が厳しくなっている昨今、未払治療費についてどのように回収するのか、真剣な取り組みが必要といえます。


2008/09/30

Q 人間ドック実施時の医師の注意義務はどのように考えれば良いでしょうか。

 

病気の早期発見のために人間ドックは様々な医療機関で実施されているところですが、人間ドックを実施している医療機関及び医師は受診者に対してどのような義務を負うのでしょうか。

この点について、東京地方裁判所平成4年10月26日判決(判例時報1469号98頁)がその義務の内容を明確にしているところです。

このケースは、人間ドックを受診した際、便潜血検査の結果がプラスワンであったが、実施医療機関が独自の基準を採用して、検査結果を通知せず再検査や精密検査を指示しなかった。その後、S状結腸癌であることが診断されたが、根治的治療がもはやできず、転移性肝癌のため死亡した事案です。

人間ドックにより精密検査の機会が与えられていれば確実に救命が可能であったのに再検査や精密検査を指示しなかったため、早期発見早期治療の機会を奪われて手遅れとなって死亡したとして、遺族は損害賠償請求をしました。

裁判所は、人間ドックは、疾病、特に癌や糖尿病といった成人病の早期発見と、適切な治療を受けさせるためのアドバイスを主たる目的として行われるものであり、受診者も当時の医療水準における適切な診断とアドバイスを期待して人間ドック診療契約を締結するのであるから、人間ドックを実施する医療機関としては、当時の医療水準に照らし、疾病発見にもっとも相応しい検査方法を選択するとともに、疾病の兆候の有無を的確に判断して被験者に告知し、仮に異常があれば治療方法、生活における注意等を的確に指導する義務を有するというべきであるとし、(但し指導義務について過失があったものの、死亡との間に因果関係は認めなかった)被験者は適切な指導を受けることにより大腸癌を含む疾病の早期発見、早期治療の機会を得ることを期待していたというべきであり、この期待は法的保護に値するものとし、期待権侵害による慰謝料請求を認めました。

この裁判例からは、人間ドックの場合にも、検査方法をきちんと選択し、異常があれば告知し、異常の場合には治療方法等を指導する義務があるといえ、医師としては右義務を怠らないようにしなければならないといえるでしょう。また、同じく定期健康診断においても、同様のことがいえると思われます。


2008/09/30

Q 患者からカルテの開示を求められていますが、開示に応じなければならないでしょうか。

 

患者さんからカルテ、いわゆる診療録等の開示を求められることが多くなっているようです。他方、カルテには、患者さんに見せることが必ずしも適切ではない事項も記載されていることがあり、医師としては判断に悩むところです。

カルテの閲覧請求について、裁判例は余り無いのが実情です。少ない裁判例の中で、東京高等裁判所昭和61年8月28日判決は、医師に治療内容などについての説明報告義務は認めているものの、その説明にあたり、診療録の記載内容の全てを告知する義務まで認められず、それぞれの事案に応じて適切と考えられる方法で説明報告すればよいとし、口頭で足りることもある、医師法の診療録作成義務を根拠に、患者本人が閲覧することを権利として保証していると考えることも困難であるとしています。

ただ、裁判例は、診療録閲覧の具体的必要性があると考えられるような事情の存在する場合に、別の根拠にて診療録閲覧請求権を認めうる余地があることを示唆しています。

この判例は、患者が常に診療録の閲覧を請求することができないとしています。

ただ、医師としては、治療内容などについての説明・報告義務は課されているわけですから、同義務を全うするのに適切な手段として、診療録の開示は常に念頭に入れておくべきでしょう。また、患者さんからの信頼関係の維持の観点から、診療録開示に特段の不適切な理由がなければ、積極的に開示に応じて、患者さんの納得を得ることも必要ではないかと思われます。


2008/09/30

Q 新しい治療法について、医療機関が実施しなかった場合に責任を問われるときは、どういった場合でしょうか。またそれは、医療機関の規模によっても異なるものなのでしょうか。

 

医療機関は、患者に対して診療をする際に、診療契約を締結することになります。それによって、医療機関は患者に対して診療義務を負うことになります。この診療義務の程度を画するものとしては医療水準という概念を用います。医療水準は、医師に対してその水準程度の診療を行うべき義務があるという形で、医師に対して法的義務を課すことになります。

新しい治療法について、これが医療水準の内容を構成する場合には、債務不履行を構成する場合があります。そこで、この医療水準はどのように考えれば良いのでしょうか。

このことを考えるに当たって、リーディングケースとして、平成7年6月9日の未熟児網膜症についての最高裁判所の判例があります。

これは、未熟児網膜症における光凝固法という治療法について、昭和49年当時、当該医療機関において診療を実施すべき義務があったかどうかということが問題となっていたものです。

最高裁は、診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準として、ある新規の治療法の存在を前提として検査・診断・治療等にあたることが診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準であるかどうかを決するについては、

  1. 当該医療機関の性格、所在地域の医療環境等の諸般の事情を考慮すべきである
  2. 新規の治療法に関する知見が当該医療機関と類似の特性を備えた医療機関に相当程度普及しており、当該医療機関において右知見を有することを期待することが相当と認められるような場合右知見は右医療機関にとっての医療水準であるというべきである

  1. 上記の場合、当該医療機関は、医師等に知見を獲得させておくべきである
  2. 医師がその知見を有していなかったために、医療機関が治療法を実施せず、また実施 可能な他の医療機関に転医させるなどの適切な措置を取らなかった場合
  3. 当該医療機関が予算上の制約等の事情によりその実施のための技術・設備等を有しな い場合、他の医療機関に転医をさせるなどの適切な措置を取らなかった場合

医療機関は診療契約に基づく債務不履行責任を負うとしています。

上記判例に従えば、医療機関としては、その所属する医師を学会などの研究会に出席させたり、医療雑誌などの情報から、新規の治療法の存在、その内容、その実施機関、実施機関の規模などの情報収集をしておくべきであるでしょう。

そのため、医療機関は、所属する医師をはじめとする医療従事者に対し、常に研鑽を求めるとともに、内部においても各診療科の標準的な治療内容について話し合い、文書化しておく等して、当院の治療内容を把握しておくことが必要でしょう。

その上で、新しい治療法などの実施機関をあらかじめ把握しておき、転医ができるように連携を構築することが望ましいと考えられます。


2008/09/30

Q ルンバール(腰椎穿刺による髄液採取とペニシリンの髄腔注入)を患者に実施したところ、脳出血が生じてしまいました。その場合、ルンバールと脳出血との間に因果関係があると認められるのでしょうか。医療事故訴訟における因果関係はどの程度立証されればよいのでしょうか。

 

一般的に、損害賠償責任を負う場合には、行為と結果との因果関係が要求されます。

医療事故訴訟における損害賠償においても、医療行為とその招来した結果との間に因果関係が要求されることになります。

では、どの程度の因果関係が要求されるのでしょうか。

上記ケースの元となった最高裁判所昭和50年10月24日判決(民集29巻9号1417頁)が参考となります。

同判決は、訴訟上の因果関係について、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟めない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りる、としました。

これは、自然科学的な厳密な証明ではなく、特定の結果発生を引き起こしたことを認められる高度の蓋然性の証明で必要十分であるというものです。

このケースでは、医学的な経験則を適用することによって因果関係を認めました

具体的には、

  • 化膿性髄膜炎の再燃する蓋然性は通常低いものであり、当時それが再燃するような特 別の事情も認められないこと
  • 経験則上、本件発作とその後の病変の原因は脳出血であること、本件ルンバールによ って脳出血が発生したこと

を認定し、因果関係を肯定しました。

したがって、医師としては、自然科学的な厳密な証明がなされていないからといって、因果関係を否定されるということはなく、経験則を検討し、高度の蓋然性が認められれば、因果関係が肯定されることもあり得ることを認識する必要があろうかと思います。

医師としては、常に医学的経験則についても研鑽を深めておく必要があるといえます。


2008/09/30

Q 注意義務の水準とはなんでしょうか?

 

医師は、患者との間で診療契約を締結して治療に当たることになる。その場合、医師としては患者に対して診療義務を負う。この診療契約であるが、病気を治して健康体にすることまでを請け負うことはできないので、治癒を仕事の完成として考える請負契約として捉えるのは適切ではなく、準委任契約と考えることが妥当であり、通説的な見解である。

そして、医師は診療契約上の診療義務を負うが、どの程度の診療を行えば義務を履行したといえるのであろうか。医療過誤訴訟において、医師の損害賠償責任の存否を判断する際には、医師が当該診療に際して法律上必要とされる注意義務を尽くしていたか否かが問題となり、上記の診療義務の質的量的範囲を画することとなる。

この注意義務はどのような基準によって画されるか。

未熟児網膜症に関する最高裁判所昭和57年3月30日判決は、診療当時の臨床医学の実践における医療水準であるとしており、この判例が注意義務を画する医療水準論のスタンダードとして定着するに至っている。

この医療水準論とは如何なるものであろうか。またこれは医師にとって日々の臨床に携わる際にどのように自らの行動原則として取り入れることがいいのか、分析してみる。

日々の診療における行動原則として分析するにあたり好例の判例がある。

平成7年6月9日の最高裁判例である(民集49巻医療過誤判例百選第2版162頁)


2008/09/30

Q 医療設備の使用方法の間違いにより患者が死亡した場合、医師が責任を負うのでしょ うか。また医療設備の製造業者は責任を負わないのでしょうか。

 

医療法の改正により、平成19年4月から無床診療所にも医療安全対策の義務化が適用されることになりました。その一環として医療機器の保守点検もしっかりしなければなりません。

医療器具・設備の使用方法や整備方法の間違いによる医療過誤は裁判例としては余り多くはありませんが、無いわけではありません。

例えば、東京地方裁判所平成15年3月20日判決は、都立病院において乳児の気管切開部位に装着した医療器具に他社製の呼吸回路機器を接続したところ接続部が閉塞して乳児が喚起不全に陥り死亡したケースについて、医療器具の製造業者の製造物責任と接続前に点検をしなかった医療機関の責任を認めました。

製造業者については、他社製の呼吸回路機器を接続することによって閉塞が起きる可能性があり、そのような場合には医療器具を使用しないよう指示・警告を発する等の措置を取らない限り、指示・警告上の欠陥があり、製造物責任を負うとしました。

また、たとえ医療器具を使用した医師に注意義務違反が認められるからといって、製造企業が製造物責任を免れられるものではないとしました。

この判例から学ぶところですが、医師は、十分医療機器の使用方法について熟知しておくことが必要であることです。また医療機器の整備についてはこの判例では触れられていませんが、おそらく医療機器の整備不全についても医師の責任を問われることも考えられ、医療機器の整備についても、医師会などで出しているガイドラインをもとに安全計画を立て、計画的に整備をしていくことが肝要でしょう。


2008/09/30

Q 入院中の患者がベッドから転落してケガをしたので、その患者から損害賠償請求をされていますが、当院としては賠償に応じなければいけないでしょうか。

 

A

医療機関は、入院中に設備によって患者が怪我をしないように配慮する義務が診療契約上の付随義務として認められているといっていいでしょう。そのため、医療機関は院内の安全設備を整備することが必要ですし、またベッドなどの家具についても怪我をすることがないように配慮する必要があります。

そして、ベッドにおいては転落を防止するための柵など設置するなど転落防止の器具を整備する必要があると考えられます。したがって、かような安全設備がなく転落してしまった場合には、医療機関は診療契約上の債務不履行責任を負う可能性があります。

では、柵などを設置していてもそれ以上に動いてしまって転落してしまった場合、どうなるでしょうか。

病状によっては、身体的拘束をして、安全を確保する義務が認められる場合もあります。ただし、身体的抑制は、患者の尊厳の確保の観点から必要最小限に考えるべきであるという考えもあり、厚生労働省は、平成13年3月に「身体拘束ゼロへの手引き」を発表し、当該患者又は他の患者の生命又は身体を保護するために緊急やむを得ない場合でない限り、身体拘束は許されないという基準を発表しました。すなわち、切迫性、非代替性、一時性の3つの要件を全て満たした場合に限って身体拘束が認められるとしています。

したがって、安全に過剰に反応して拘束をすると、かえってその行為自体が患者の尊厳を傷つけ、かえって慰謝料などの請求がされかれないことになります。

この点について参考となる判例があります。大阪地方裁判所平成19年11月14日判決(判例時報2001号58頁)は、県立病院に入院中の患者がベッドにより転落受傷した事故について、病院の医師、看護師に過失が無いとして県に対する損害賠償請求を棄却した例です。

同判決は、上肢に限定した抑制措置を講じたことは、患者の状態等から考えると適切な措置であったと認め、事故発生について医師や看護師の過失を認めませんでした。裁判所は、抑制帯について患者が説明をしていたこと、患者の体動の状態、抑制について限定的に行うべきこと等の要素から総合的に判断しているようです。したがって、常に抑制帯を用いる必要があるか否かは議論の余地があり、それは結局患者の状態にもよるということです。

医療機関としては患者の状態をよく見極めながら状況に応じて抑制帯などの利用をおこなって事故の発生を防ぐ努力をしていかなければならないと思われます。

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