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  1. 新しい治療法と水準
 

新しい治療法と水準

2008/09/30

Q 新しい治療法について、医療機関が実施しなかった場合に責任を問われるときは、どういった場合でしょうか。またそれは、医療機関の規模によっても異なるものなのでしょうか。

 

医療機関は、患者に対して診療をする際に、診療契約を締結することになります。それによって、医療機関は患者に対して診療義務を負うことになります。この診療義務の程度を画するものとしては医療水準という概念を用います。医療水準は、医師に対してその水準程度の診療を行うべき義務があるという形で、医師に対して法的義務を課すことになります。

新しい治療法について、これが医療水準の内容を構成する場合には、債務不履行を構成する場合があります。そこで、この医療水準はどのように考えれば良いのでしょうか。

このことを考えるに当たって、リーディングケースとして、平成7年6月9日の未熟児網膜症についての最高裁判所の判例があります。

これは、未熟児網膜症における光凝固法という治療法について、昭和49年当時、当該医療機関において診療を実施すべき義務があったかどうかということが問題となっていたものです。

最高裁は、診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準として、ある新規の治療法の存在を前提として検査・診断・治療等にあたることが診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準であるかどうかを決するについては、

  1. 当該医療機関の性格、所在地域の医療環境等の諸般の事情を考慮すべきである
  2. 新規の治療法に関する知見が当該医療機関と類似の特性を備えた医療機関に相当程度普及しており、当該医療機関において右知見を有することを期待することが相当と認められるような場合右知見は右医療機関にとっての医療水準であるというべきである

  1. 上記の場合、当該医療機関は、医師等に知見を獲得させておくべきである
  2. 医師がその知見を有していなかったために、医療機関が治療法を実施せず、また実施 可能な他の医療機関に転医させるなどの適切な措置を取らなかった場合
  3. 当該医療機関が予算上の制約等の事情によりその実施のための技術・設備等を有しな い場合、他の医療機関に転医をさせるなどの適切な措置を取らなかった場合

医療機関は診療契約に基づく債務不履行責任を負うとしています。

上記判例に従えば、医療機関としては、その所属する医師を学会などの研究会に出席させたり、医療雑誌などの情報から、新規の治療法の存在、その内容、その実施機関、実施機関の規模などの情報収集をしておくべきであるでしょう。

そのため、医療機関は、所属する医師をはじめとする医療従事者に対し、常に研鑽を求めるとともに、内部においても各診療科の標準的な治療内容について話し合い、文書化しておく等して、当院の治療内容を把握しておくことが必要でしょう。

その上で、新しい治療法などの実施機関をあらかじめ把握しておき、転医ができるように連携を構築することが望ましいと考えられます。

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