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  1. 新生児感染事件(東京地判昭49.4.2)
 

新生児感染事件(東京地判昭49.4.2)

2008/09/30

1.事実の概要

昭和40年6月から9月にかけてY産院で出生またはY産院に入院した乳児において、同年末から翌年6月ころにかけて、X1ないしX4を含め29名の結核感染児が発見され、ほかに肺炎と診断され入院した後死亡しその胃液から結核菌の検出された乳児が1名いたことが判明し、新聞等に大きく報道された。

○○衛生局は乳児結核調査委員会を設置し、同委員会は、乳児らはY産院に入院中に未熟児室あるいは新生児室において結核菌に感染したとの調査結果を公表したが、Y産院は院内感染ではないと主張していた。

X1ないしX4とその父母X5ないしX12がY産院に対して損害賠償を求めたのが本件である。


2.裁判で争われた点

⑴ 病院の具体的注意義務違反(過失)

⑵ 感染源および感染経路(因果関係)


3.裁判所が示した病院側の義務

⑴ 医療機関においては、伝染性疾患の早期発見のため医療機関以外においてなされるより頻繁にかつ専門医により厳格に健康診断を行わなければならない義務がある。

⑵ 医療機関においては健康診断の結果伝染性疾患に罹患している疑いのある者が発見された場合、その者が罹患していないと確認されるまでは一応伝染性疾患罹患者として扱い職場から隔離する義務がある。

⑶ 再循環式空気調節器によりナースステーション内の空気を未熟児室内、新生児室内へ送る場合には、未熟児ないし新生児は細歯に対し極めて抵抗力が低いのであるから、ナースステーションも未熟児室・新生児室に準じて厳格な衛生管理を行い、消毒を済せた担当医師、看護婦らの医療従事者以外の者は入室させない取扱いをすべき義務がある。

⑷ 医療従事者以外の者がナースステーションに出入することがない場合においても、ナースステーションの受付小窓から室内に向い話をした場合において、病原菌が室内に飛散され、再循環式空気調節器により未熟児室内、新生児室内に送り込まれることを防ぐための方策を採るべき義務がある。

⑸ 病院内における乳児の集団結核感染の疑いが生じた後において、病院には、当該時期の入院者に対しツベルクリン反応検査を行う等してその患者の発見に努め、その追跡調査を尽くし、発病、患者の病状の悪化を防ぐための措置を採るべき義務がある。


4.具体的注意義務違反に関する裁判所の判断

⑴ Y産院は、年一回定期健康診断を行っていただけであり、それも専門医とはいい難い医師に委せ、X線写真も原則として間接撮影にとどめていたため、各X線写真撮影時期に結核患者を発見しえたにもかかわらず、昭和40年7月あるいは同年12月ころまでこれを発見できず、その間、排菌者を含む結核患者10名を業務に従事させていた過失がある。

⑵ 被告は、昭和40年7月の間接撮影の結果、従業員AおよびBに結核発病の疑いが生じた後、さらには直接撮影の結果によりAについてそれが確定的になった後においてもなお、直ちにA、Bを職場から隔離する等伝染の機会をなくす措置を採ることなく、Aには昭和40年8月25日ころまでそれまでと同様の勤務をつづけさせ、Bに対しては少くとも同年12月まで未熟児室に勤務させていた。Y産院は、胸部X線写真撮影の結果結核発病の疑いのある者は職場から隔離する等の措置を講ずる義務があったにもかかわらずこれを怠り、AB両名を上記各期間Y産院内で健康人と同様の業務に従事させていた過失があった。

⑶ Y産院では、ナースステーションへは医療関係者以外の職員、外来者も自由に出入りでき、とくに、乳児の父母はナースステーション内から未熟児室、新生児室に入院中の乳児に面会していたことが認められ、医療従者以外の職員及び外来者にナースステーションに自由に出入させていたものであり、この点につき過失があった。

⑷ Y産院の再循環式空気調節器は結核菌を通過させるものであり、その他に結核菌の濾過装置等の設備はなく、この点につき過失があった。

⑸ X1は毎月一回昭和41年2月までY産院において定期健康診断を受けていたが、結核については何らの診察もされず同年4月16日にはじめて結核と判明した。X2は昭和40年10月20日、同月27日いずれにおいてもツベルクリン反応検査中等度陽性であり、昭和41年2月18日結核発病と診断されていたが、同年4月10日ころになってはじめて保健所が調査に来た。X3は昭和41年3月18日別の小児病院においてはじめてX線写真を撮影した。X1〜X3の各結核がY産院の集団発生と関係あると判明したのは昭和41年4月16日ころ、他の14名の結核患者についての報道がなされた後であること、Y産院は、乳児結核集団院内感染の疑いが生じた昭和40年12月ころ、○○衛生局に資料を提供したことが認められ、Y産院がとくに入院者の追跡調査等を行っていることは認められない。したがって、Y産院には、乳児結核院内感染の疑が生じた後、入院者の調査、患者の病状の悪化を防ぐための措置を怠った過失がある。


5.裁判所の因果関係の認定の仕方

Y産院には、上記⑴〜⑷の過失があったものといわざるを得ず、そのいずれか、もくは複数が原因となり、入院中の乳児に結核菌を感染させたものであると推認せざるを得ない。


6.病院に求められる院内感染防止策

⑴「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き(案)」

⑵ 「病院内感染対策ハンドブック第4版(2002年度)」国立国際医療センター院内感染防止委員会

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